陽のあたる場所へ
「確かに言われる通りだ。非常識な時間に上がり込んで長々と付き合わせて、本当に申し訳ない」
龍司は沙織に向かって、深々と頭を下げた。
「私の…私の気持ちなんて…、全然わかってないじゃないですか!
私のこと、貴方が上司だからセクハラや嫌がらせに耐えてた、ただの淫乱女だとか思ってたんですか?!」
「いや、そんなふうには…でも…」
「貴方が…貴方のことが、好きだからに決まってるじゃないですか!」
俯いて肩を落としていた龍司が、顔を上げて、驚きに目を大きく見開いた。
「好きだったんです…ずっと。
いきなりキスなんかするから…
ただの出来心だとわかってても、惹かれて行く自分を止められなかった。
だから、貴方に身を任せてしまった。
でも、身体の関係ができたところで、貴方が私を愛してくれるなんて思ってなかった。
それなら、相手にされない方がマシだと何度も思ったけど、それでも貴方の体温を感じていたかった。
愛されてないとわかってても、それでも良かった。
いえ、仕方ないと思ってた。
ただ貴方のことが好きで、どうしようもなくて…
だから私は…」
いつの間にかまた涙が溢れて来て、自分の声が震えてしまう。
気付けば、龍司の温かく大きな胸に包まれていた。
突然のことに一瞬怯んだ沙織だったが、居心地の良いその胸の中で、ゆっくりと目を閉じた。
「ごめん…本当にごめん…。ありがとう…」
抱き締める腕の力が強くなり、沙織は息苦しさを覚えたが、それでも、初めて気持ちを込めて抱き締められていることを実感して、喜びの涙を流した。