陽のあたる場所へ
笑いながら龍司の唇が近づいて来て、沙織はそれを自然に受け止める。
今まで何度か抱かれたけど、愛のこもったキスをされたことは一度もなかった。
唇に、頬に、瞼に、髪に、そして沙織の体中に、温かいキスの雨が降る。
そして、ゆっくりとひとつになって行く二人の身体。
一番深いところで繋がり合った事を確かめると、感情が昂って来て、どちらからともなくきつく抱き締め合う。
身体だけでなく、やっと心も繋がった…
それがこんなにも心を震わせ、温かい涙が溢れる。
やがて始まった龍司の律動で、沙織の身体の奥がどんどん熱くなって溶けて行く。
憎しみや怒りをぶつけるような、
目の前にいる自分を壊そうとしているかのような、
そんな抱き方しかされて来なかった。
今は違う。
沙織の身体の全てを愛して止まないと言わんばかりに伝わって来る龍司の熱…。
全て受け止めたい。
身体の中に、全部閉じ込めてしまいたい。
「沙織……って、呼んでいいか?…」
低く呟くように名前を呼んだその唇が、沙織の返事を聞く前に、その吐息を吸い取るようにまた重なる。
何度も角度を変えては重ね直し、そして一瞬離れては、またすぐに求め合う。
身体の奥から湧き上がって来る、切ないような痺れるような感覚…
昇りつめたいけど、ずっとこのまま囚われていたい。
様々な感情と感覚が一気に押し寄せ、息苦しさを覚えた沙織は、龍司の唇から逃れると、ギュッと目を閉じて声を解放した。
それを追い掛けるようにして、龍司の呻くような吐息が、沙織の首筋に熱く吹きかけられた。