陽のあたる場所へ
⑮ 陽のあたる場所
高速を降り、大きな川沿いの道を走る。
車の窓から眺める並木道の桜は、あと少しで満開の見頃を迎えるのだろう。
窓を少し開けてみると、随分暖かくなった風を額に感じ、沙織は大きく息を吸ってみる。
「緊張してる?」
「えぇ…そりゃ、まぁ…」
「…あのさ…」
「はぃ?」
ハザードランプを点滅させながら、車を路肩に止める龍司の表情が、いつになく高揚しているように見えた。
「悪い。緊張してるの、俺の方。
背中、思いっきり叩いてくれないか?」
龍司の意を汲んで、沙織が力いっぱい背中をバン!と叩く。
一瞬、顔をしかめた龍司が、ウォーッと叫んでアクセルを踏んだ。
隣で沙織がクスクスと笑い始めたのにつられて、龍司の表情がやっと緩んだ。