陽のあたる場所へ
卓也の行方は、暫くの間、わからなかった。
八方、手を尽くして、やっと居場所がわかったと父から聞いた時には、居てもたってもいられない気持ちになった。
しかし龍司は、何度もこの場所を訪れようと考えながらも、どうしてもその勇気がなく、忙しいせいにして逃げ続けていたのだ。
卓也の少し後ろで穏やかに微笑む女性がいた。
先日、こちらへ来る為に、龍司が電話で連絡をした時、女性が出たので驚いた。
二年前に結婚したのだと聞いた。
兄は家を出たものの行くあてもなく、幾つかの街を転々とした後、昔、少しの間、療養していた場所に辿り着いた。
そこで仕事を探し、その関係で二人は知り合ったらしい。
現在は、兄の妻、千晶(チアキ)は、結婚前から勤めていた職場で仕事を続け、兄は彼女の母親がやっていたコーヒーショップを譲り受け、ここのマスターをしながら、小説を書いているらしい。