陽のあたる場所へ
とりあえず一難は去ったものの、また罵倒されるネタが湧いて来る。
「柳川先生の表紙のデザイン、どうなってる?」
「いろいろ案を見て頂いてるんですが、どれもしっくり来ないらしくて…。別のサンプルをまた作って貰ってるところです」
「はぁ?!いつまで待つつもりなんだ!作家の我が儘ばっかり聞いてたら、発行予定日に間に合わないだろうが!」
「すみません。でも、作家さんにとっては、自分が苦労して生み出した大切な作品ですから、妥協はできないかと…」
「そんなことはわかってんだよ。わかった上で、段取りするのが、あんたの仕事だろ?!新入社員じゃあるまいし、要領悪過ぎるんだよ」
今まで、自分で何とかやって来たと思っていたが、甘かったのかも知れない。
勿論、自分だけの力とは言わないが、目につかない所で、他の誰かが一生懸命フォローしてくれてたからこそ、何とかなっていたのだろうか。
先代の社長にも認めて貰えていると思っていたのは単なる自惚れで、温厚な前社長が実は励ます意味で寛容な目で見てくれていただけなのかも知れない。
そして、そう考えると余計に、
龍司にまた何か指摘されるかも…と思えば思うほど、手落ちが出て来てしまうのだ。