陽のあたる場所へ


病棟の外には、海を臨む庭があり、患者達は、家族や介護士らと散歩をしたり、ベンチに座って海を眺めながら風に当たったりしている。

ナースに案内され、車椅子に座った一人の男性の後ろ姿に近付いて行く。
龍司の緊張が伝わって来て、沙織は彼の手を取りそっと握った。



側にいた介護士に龍司が挨拶すると、彼女は、車椅子に座った横顔に微笑み、肩に手を置いて囁くように言った。

「良かったですね。ずっと待ってた人が来てくれましたよ」

一礼して立ち去る介護士に、沙織も頭を下げてから見送った。
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