陽のあたる場所へ


「父さん…」

龍司の声が、心なしか震えている。


ゆっくりと顔を上げた初老の顔が、龍司と沙織を見て、柔らかく微笑んだ。

「貴方達も、桜を見に来たんですか?
ここは、桜越しに海が見えるから、最高の景色ですよ」

彼は、満開の桜に目を向け、そして遠くの海を目を細めて眺めながら言った。



「…父さん…」

龍司の声が涙声に変わり、絞り出される。


「父さん、…ごめん。…俺、龍司だよ。
父さんのこと、苦しめてごめん。
長い間、ずっと会いに来れなくて、本当にごめん…」

龍司が車椅子の前にひざまずき、彼の手を握る。
彼は、龍司の顔を見て僅かな微笑みを浮かべるだけだ。

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