陽のあたる場所へ
「…龍……司…」
彼はグローブを見つめると、小さな声で呟いた。
「父さん?」
「いつも忙しくて相手をしてやれなかったんです。
この先の公園で、息子が待ってるんです。」
そう言いながら彼は、両足に力を込め腰を持ち上げ、立ち上がろうとしたが、よろけて前のめりに倒れそうになった。
瞬時に龍司がその体を支え、車椅子に戻るようにゆっくりと座らせた。
少し息が乱れ、それを整えながら、彼は龍司の顔をじっと見つめた。
「…龍司…」
顔を見てそう言われたので、龍司の表情が驚きに変わり、息を飲んだ。
「貴方、うちの息子に似てるような気がします。そうか…大人になったら、貴方みたいな感じの青年になるのかな…楽しみだな…」
半信半疑ながら、自分のことを思い出してくれたのかと期待した龍司だったが、その思いは一瞬にして打ち砕かれた。
落胆の色が浮かんだその表情は、どんどん歪んで行き、そして、車椅子に手を掛けたまま、崩れ落ちるように膝を着いた。