陽のあたる場所へ
俯いた龍司の顔は、髪に隠れて見えなかったが、必死に嗚咽を堪えようとする声が、沙織の胸を締め付けた。
沙織は、かける言葉も見つけられず、ただ、龍司の背中を撫で続けた。
「貴方達は、恋人同士ですか?」
沙織に向かって、彼が声をかけた。
「…あ、はい…」
沙織がそう答えると、彼は穏やかな微笑みを浮かべた。
「そうですか…是非幸せになって下さいね。
…私は…若い頃、自分のエゴや浅はかな行動で、家族を酷く傷つけてしまった。
絶対に許されないようなことを、妻や息子達にしてしまったんです。私はこの懺悔の思いを、墓場まで持って行かなければ…」
淡々と語る彼に、余計に胸が締め付けられ、沙織が何か言葉をかけようとした時、龍司が彼の手を取って言った。
「僕も…自分の身勝手な振る舞いで、多くの人を傷つけました。自分の行動を被害者意識で正当化しようとしたけど、そんな事はただの言い訳に過ぎないとわかっていたのに…」
龍司はグローブの上に乗せた彼の両手を握ったまま、彼の手の甲に顔を擦り付けるようにして、苦し気に声を絞り出した。