陽のあたる場所へ
暫くそのままでいた彼の片手が、龍司の手をすり抜けると、そのまま頭に手を掛けて、ゆっくりと髪を撫で始めた。
それは、父親が幼い我が子を慈しむように、とても優しい仕草だった。
龍司の肩が一瞬ビクッと震えると、背中が大きく震え、今度は堪えることもせずに嗚咽を漏らし始めた。
沙織は二人の前に跪くと、彼の腕と、龍司の背中を撫でながら言った。
「もういいじゃないですか…
お二人とも、充分苦しんだんです。
神様も、相手の方達もきっと許してくれてます。
だから…今度は自分のことを許してあげましょうよ。ねっ…
もう暗闇の中は抜け出して、陽の当たる場所を歩いていいんですよ」