陽のあたる場所へ
あれから1ヶ月経ったが、あのエレベーターでのキスは、まるで夢でも見ていたかのように、龍司の態度はあまりにも普通通りだった。
「この小説、あの横領事件の話だよね。
犯人女性の、恋人に対する心理をメインにしてるんだろうけど、事件の事実に誤りがある。
女性作家は、調査が雑だから困るんだよな。
この辺り、ちゃんと裏付け取ってないだろ?」
「あ、はい…すみません」
「見る人が見たら、わかるんだよ!ノンフィクション部分はちゃんとチェックするのが基本だろ?!
今日中にちゃんとしとけ」
毎日、残業が続き、クタクタになっていた。
今日は久しぶりに早く帰れそうな気がしてたのに、まただ…。
思わず溜息が出てしまう。
しかし、それも自分の手落ちなのだから仕方がない。