陽のあたる場所へ
穏やかな波の音が、心地よく耳に届いて来る。
全ての人々の、様々な遣りきれぬ想いを、何もかも包み込んでは、深い海の中に連れ去って行くかのように、優しい音で…。
突然、吹いて来た風に、満開の桜がいくつもの花びらを散らす。
見上げると、枝を覆いつくすような桜の花が、まるで優しく見守るように、微笑みかけるように、見下ろしていた。
これからは、顔を上げて生きて行く…。
桜の花が、そう導いてくれたような気がした。
春風に乗った花びらは、暖かい陽の光を浴びながらゆったりと空を舞い、広い海の上へと飛んで行った。