陽のあたる場所へ
昨夜、裕一郎のバンドは全国ツアーの最終日を終え、今日は数件の取材の後に帰宅して、久し振りにゆっくりできるのだそうだ。
「ドラマにバラエティーにライブツアーに…大忙しですよね。
一緒に過ごす時間、ホントに久し振りなんじゃないですか?」
「そうね…。私も〆切に追われてると、彼が珍しく家に居ることがあっても構ってられないからね。
でも、かえってそれがいいのかも。向き合える時間が新鮮だし、大切に感じられる」
「そんなもんですか…」
「そんなもんよ。…私達はね。
彼はいろんなことやってるけど、やっぱ音楽が一番好きなのよね。
だから私は、ライブツアーから帰って来た時の裕一郎の表情が一番好き」
「素敵ですね。
私は大丈夫なのかなぁ…ちゃんと忙しい彼を支えて行けるのかしら…」
「あんな偏屈で面倒くさそうな男を変えた沙織ちゃんだもん。大丈夫よ」
「…うっ…。随分な言いようですね…」
「あっ…ごめーん!うちのは逆に単純極まりないから楽なのかもね。あははは!…」
楓が豪快に笑う。