陽のあたる場所へ
「海野ー!海野さんはまだ戻ってないのか?」
「あ、はい、さっき電話あったんで、もうすぐ戻る筈ですが」
光里が龍司に声をかける。
「全く!…早く入稿しないと間に合わないと言ってあるのに、何やってんだ?!」
煙草をくわえたまま、事務所のドアをチラチラ見ながら、龍司が通路を行ったり来たりしている。
自分のデスクがある窓際まで戻った所で、ふと龍司が何かに気付いたように立ち止まる。
そして、わざとドアに背を向けたまま、大きく息を吸って目を閉じた。
いつの間にか覚えてしまった靴音が、だんだん近付いて来る。
あと少し…
もうすぐここに来る。