陽のあたる場所へ
「沙織…、最近どうした?…何か…らしくないよね?」
光里が正面の席から、少し身を乗り出すようにして、声をひそめて言った。
「な~んかねぇ、あの社長になってから、沙織、メチャクチャ調子悪いじゃん?あの社長、イケメンだけど、沙織には疫病神なのか?」
「光里ってば、聞こえるよ!」
「大丈夫だって。電話中だし」
そう言われて龍司の方を見ると、電話をしながら何か書類をガサガサと探していたので、こっちの話など耳に入る筈もないと安心した。
「沙織はねぇ、明るいのだけが取り柄なんだからさぁ、頼むよ。今回のことは沙織の手落ちだから仕方ないけど、あんまり理不尽なことばかり言われるのなら、私、文句言ってやるから」
「明るいのだけが取り柄って…。随分な事言うよね?
でも、ありがと。頼りにしてるよ」
入社以来、こうやって何かあれば支え合って来た。
どちらかと言うと、しっかり者の光里に沙織が助けられる事の方が多かったように思うが…。
今の沙織にとっては、同僚であり、最も信頼できる親友でもある。
「今日はもう仕事ないから、手伝おうか?」
「大丈夫。そんなにかからないと思うし。残業のない日くらい早く帰りなよ」
光里が声をかけてくれたが、 既婚者の光里に、自分のせいで残業させる訳には行かない。