陽のあたる場所へ


先代の社長の時期の書物は、全部処分して欲しいということだ。
やはり、二人の間には、何かしがらみがあるのだろうと感じた。



先代社長の穏やかな微笑みを思い出す。

勿論、仕事に妥協を許す人ではなかったけれど、厳しさの中に、人間味と懐の深さを感じる人だった。

どんなに大変な仕事でも、過程を理解して労いの言葉をかけてくれたので、これからも頑張ろうと前向きな気持ちになることができた。


あの頃は良かったな…
仕事がきつくても、認めて貰えてると思うだけで、遣り甲斐を感じられた。
もう復帰がないのはわかっているけれど、残念で仕方がない…と思ってしまう。


退院して通院しながら自宅で療養中、と聞いているけれど、どんな具合なのだろう?

突然の退任だったし、社長の座を退いている立場上、社員の見舞い等は受けない方針だと聞いていたので、お世話になったお礼も言えないまま、会えなくなってしまった。

少しでも快方に向かっていると良いのだけど…。




そしてこの新社長に、いつか認めて貰える日は来るのだろうか…

勿論、自分次第なのはわかっている。
でも " 反りが合わない相手 ” というものが本当にいるんだと初めて実感したくらいやりにくい相手なのは確かだ。
どんどん悪循環が重なって、這い上がれない状態まで来てしまった。
目の敵のようにされてしまうのも仕方ないのかと思いながらも、やはりそれは辛い。



最大の厄介な問題は、上司として最悪な相手なのに、人間性の部分でも認めたくない相手なのに、
どういう訳か、男として惹かれてしまっている事だ。

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