陽のあたる場所へ



沙織のこれまでの恋愛は、順風満帆でもなかった。

大学時代から長く付き合って、漠然と結婚を考えた相手とは、海外転勤を機に別れてしまった。

次に出会った男性は、誰からも、申し分のない人だと言われ、プロポーズまでされたが、沙織の気持ちがついて行けず、それもダメになった。



しかし、この恋は、今までの比ではない蕀の道だ。

俗に言う、障害があったりうまく行かない恋愛の方が燃える…なんて言うつもりはない。
そんな余裕なんて、ない。

相手が恋愛対象だけでなく、仕事にも絡んでいるとなると、もう毎日の生活自体が荒んでしまうのは目に見えている。



引き返したい。
引き返さなきゃ…。

沙織は必死に自分に言い聞かせようとしていた。
  


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