陽のあたる場所へ
仕事に没頭している龍司に背を向けた形で、指示された物を出してはダンボールに詰めて行く。
頭を使わない分、余計な事ばかり考えてしまう。
結局は何をどう考えても、堂々巡りになってしまうのだけれど…。
「この書類は、シュレッダーにかけといてくれ」
龍司に呼ばれて、書類の束を受け取る。
不意に手が触れ合って慌てた沙織が、手を引っ込めたので書類が床に散乱してしまった。
「す、すみません」
「全く‥。雑用もダメなのか」
呆れ顔で溜め息をついた龍司は、煙草に火をつけ、落ちた書類を拾い集める沙織を見ていた。
煙を吐き出す息の音にさえ、苛ついている様子が伝わって来る。
龍司の足元に落ちた残りの数枚を拾おうとした時、龍司がしゃがみ込み、それを拾った。
「あ、申し訳ありません」
そう言って受け取ろうと沙織が手を出すのを無視して、その書類の束を、胸元に突き付けられた。
「あんたさぁ…俺の秘書にならない?」