陽のあたる場所へ
確かに整った顔立ちだと思った。
大きな目に、スッと高い鼻。
形の良い唇。
柔らかそうな緩いウェーブのかかった髪型が、よく似合っている。
背は程々に高く、やや細身ではあるが、仕立ての良さそうなスーツの下に蓄えられた筋肉質な感じが、何となくわかる。
そして、専務に紹介されて話し始めた声は、低音で心地好いが、キビキビとした歯切れの良い喋り方をしていて、目力もあるせいか、気迫のようなものが伝わって来る。
これは若い女子社員達が騒いだとしても無理はない。
もう既にあちこちで上擦った感じのヒソヒソ声が聞こえて来る。
見回すと女子社員達が、頬を高潮させて囁き合っていた。
龍司の目が、社員達の顔を一人一人確認するように動いて行き、当然の流れで沙織ともほんの一瞬だけ目が合った。
心拍数が上がっているのは、走った後でまだ呼吸が整っていない状態だから…。
断じてときめいたとかそんな事ではない。
そこは冷静に判断することができる。
外見が良いのは認める。
でも、何だか自信に満ちた感じか傲慢そうにも見える…。
あの噂が本当だったとしても頷ける…
などと思ってしまった後で、人を外見で判断してはいけない。
…そう思い直した沙織だった。