陽のあたる場所へ



一瞬、幸せだと錯覚した。

錯覚だと気付くのにも、時間はかからなかった。



沙織の身体から出て行くと、すぐに日常に戻ることのできる人。


「不要品、ダンボールに詰めたら、隅に置いといてくれ。終わったら帰って構わない」

服装を整えながら、沙織の顔も見ずにそう言うと、スーツのジャケットの袖に腕を通しながら、龍司は社長室を出て行った。
 




暫く、呆然と床に座り込んでいた。
火照った身体がなかなか冷めなかった。


< 50 / 237 >

この作品をシェア

pagetop