陽のあたる場所へ


料亭の前の道まで、沙織は柳川を肩で支えながら、出て行った。
柳川の足元が覚束ないので、沙織も一緒にふらついてしまう。

吉沢が心配そうに、時々柳川の背中に手を添えたりしながら、後をついて来る。

呼んでおいたタクシーのドアが開き、柳川を車内に乗せようとしていた時、その後ろにもう一台のタクシーが停まり、中から龍司が降りて来た。



「社長?…どうして…」

「どうして、って…、お前らが呼んだんだろが」

「すいません、海野さん。僕がさっき電話して…」


驚いている沙織に詫びた後、吉沢は沙織と柳川から少し離れ、龍司に小声で言った。

「社長、すみません。あの後、先生、海野さんと話してたら落ち着いたみたいで。すぐ電話すれば良かったんですけど、今度は僕に、飲め飲め!ってやたら明るく絡んで来てちゃってて…」

「どうなってるんだ?」

「僕にもわかりません。僕が社長に電話して、その後、別件の電話に出て、戻ったら、先生、随分穏やかになってて…」

首をかしげながらそう答える吉沢に、龍司が柳川の方に目を向けてみると、その言葉通り、柳川は晴れ晴れした顔をしている。

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