陽のあたる場所へ

龍司が社長に就任して、二ヶ月が過ぎた。


相変わらず、彼が動くだけで周りの空気の質や色が変わって見える。

下世話な言い方をすれば、イケメンの上に、30歳という若さで、前途有望な会社の社長。
うまく行けば玉の輿。

女子社員の中には、何とか社長と接触を持ち、自分の存在をアピールしようとする者が目につくようになった。

もっとも、当の本人は、媚びを売るような者の顔はまともに見ないし、軽くあしらうどころか、眼中にないという姿勢を貫いているようだったが…。


沙織には、その女性達のことは常に自分とは関係ない世界の生き物のように見えていた。
別に軽蔑するとか、そういう事ではない。
その人自身に惹かれる部分があって、仕事もでき経済力が備わっているのなら、それが更なる魅力になるのは理解できる。
その女性達がただ打算的な考えだけで、彼との将来を夢見ているなどとは思っていない。

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