陽のあたる場所へ
「社長、お忙しいのに呼びつけてしまったみたいで、すみませんでした」
「いや、作家の性格を把握しておくのも仕事の一環だからな。それより、どうして柳川先生…」
龍司はそこまで言いかけて、少しだけ何かを考えたが、すぐに口をつぐんだ。
「…あ、いや…、さっきのタクシー待たせておけば良かったな。もう一台、呼ぶか」
「私なら、電車で大丈夫です。ここからなら、○○線で5区ですから」
忙しい中、折角駆け付けたのに、無駄足になってしまい、嫌な顔して舌打ちでもされるのかと構えていた沙織だったが、龍司が思いの外、普通の反応だったので、ホッとしながら答えた。
「同じ方向だな。空車が来たから、一緒に乗って行けばいい」
龍司はそう言うと、走って来るタクシーに手を上げた。