陽のあたる場所へ
「ごめんね…。結局、何の力にもなれなくて」
二人でエレベーターに向かいながら、光里がすまなそうに沙織に言った。
「ううん、そんなことない。光里に聞いて貰ってスッキリしたし、久しぶりに会社以外で会えて嬉しかったよ。ありがとう」
「そう?…だったら良かったけど。ケーキご馳走様。今度は美味しいご飯とお酒にしようね」
「うん」
光里に全て打ち明けて、慰めて貰いたい気持ちもあったが、気心の知れた光里と仕事以外の話をゆっくできる機会を持てたことで、沙織の心は、随分ほぐれてリフレッシュできた気がした。
「沙織…」
「ん?」
「とにかくさ、気持ちに正直にね。最初から諦めてたら、何も始まらないよ。
ても…もし傷つくことになっても、私はいつでも沙織の気持ちを支えるから」
「光里…ありがと…」
エレベーターが来て乗り込む沙織を、明るい笑顔で手を振り見送った光里だったが、その姿が扉の向こうに消えると、思わず溜息をついた。
「そりゃ、やっぱ、私には話せないよね‥」