陽のあたる場所へ
光里の家を出て駅に向かう帰り道、二つ先の角を曲がると少し大きな通りに出る。
この道は、何年も前に、何度も歩いたことがある。
光里の家に行く以外、もう一つの理由…。
懐かしい思いに、胸が切なくなる。
もうすっかり過去になってしまった恋の思い出だ…。
今の時代、女が30歳過ぎたところで、いや、正確には32だけど…別に独り身なんて珍しくもない。
結婚したいとか、焦っている訳でもない。
ただ、愛する人、信頼できる人が側に居るということは、素直に羨ましいと思う。光里達を見ていて、そう強く感じた。
駅に向かう帰り道、カフェやレストランの中、舗道を歩くカップルや、家族連れを見て、微笑ましいと思った。
愛が満ち溢れた柔らかな世界…。
自分にだって関係ない世界ではない筈なのに…。
歩きながら、何かを蹴飛ばしたのに気づき、足元を見ると、所々がへこんだペットボトルが転がっていた。
少し先にある自販機、その横のゴミ箱に入り切らないのか、ペットボトルが乱雑に突っ込んであるのが見えた。
多分、そこから溢れたのが転がり落ちたのだろう。