陽のあたる場所へ
そんなに気負ったり構える必要もないのかも。
沙織には、もう別に好きな人がいる。
以前、好きだったからと言って、また亮に気持ちが戻ることはないだろう…。
亮にだって、結婚はしていないとは言ったものの、恋人は居るのかも知れない。
何よりも、もう五年も月日は流れているのだ。
あの頃のままではない二人なのだから、あの頃とは違った良い関係が築けるかも知れない。
店を出てから、途中まで同じ電車に乗り、沙織が先に最寄り駅で降り、電車の中の亮に手を振って見送った。
思えば、大学から一緒に帰る時は、いつもそうだった。
そこに他の仲間が加わっていたり、二人だけだったり…。
くだらない冗談を言ったり、悩みを相談し合ったり…
数々の共有できる想い出が甦る。
あの頃は、二人が愛し合って、そして別れることになるなんて想像もしていなかった。
いや…いつか仲間にからかわれた通り、本当は、お互い惹かれ合っていたのだろうか…。
最後の最後に、また懐かしさが込み上げた。