絶対値のゆくえ
+3
「いずたそー」
「何?」
中学3年生の秋。
オレンジの光が差し込む放課後の教室で。
居残りで日誌を書いていたら、忘れ物をしたと言って突然君が現れた。
「お前、高校どこ受けるの?」
「私? 今のとこ、北高志望だよー」
そっちこそどこ志望? と聞こうとしたと同時に、
君は頭をかきながらこう言った。
「俺、北高はかなり頑張らなきゃ無理って言われた」
「…………」
「あーあ。しょーがねーし頑張ろっかなー」
「え、何を?」
「受験勉強」
そう言って得意げな顔になった君に、私の心臓はふわりと浮かび上がるくらいに高鳴った。
だって私は受験が終わったら、君に告白をしようと思っていたから。
,。・:*:・゚’☆,。・:*:
『絶対値のゆくえ』
< 1 / 43 >