絶対値のゆくえ
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☆
「はじめ」
何度目かの模擬テスト。
カッカッ、と机に鉛筆が叩きつけられる音が、教室中のいたるところから発せられる。
隣にいる君の方からも、時々途切れつつもその音が聞こえてきた。
もちろん、私も日ごろ積み重ねた知識をフル活用する。
終わった後、君はぼーっとした顔で椅子にもたれかかっていた。
テストで疲れたのかな? と思っていたけど。
「……っ、ゲホッ」
「ちょ、よっくん風邪? 大丈夫?」
「あ? ちょっとタンが絡んだだけ……」
もしかして……!
心配のあまり勝手に体が動いてしまう。
私はガタンと椅子を倒しながら立ち上がり、君のおでこに手を当てていた。
触れた部分は、自分のよりも明らかに熱くて胸が痛んだ。
「熱ある! 結構あるよ、これ!」
「ちょ、やめ……ばか!」
君の顔がほんのり赤いのは熱のせいだ。
今、もっと赤くなった気がしたけど。