絶対値のゆくえ
「俺さ頭わりーし、将来のこととか全然考えてなかったけど。
にーちゃんが大学生で毎日楽しそうで。いいなーってずっと思ってて」
「うん」
「北高入れば、俺も大学行けるのかな。親は行ってほしいみたいだけど」
「……ちょっと待って。えーと、早くね? まずは高校合格しないとでしょ」
「あ、そっか。って俺調子乗ってた?」
「絶対、2人で行こうね。北高。……だからまずは体良くしなきゃ」
1人で照れてる君にそう伝えると、
「ばーか」と言って、君は私の逆側に寝がえりを打った。
それから、布団のせいでこもった声が聞こえてきた。
きっと私に聞こえないように、でも聞いてほしくて言ったんだと思う。
早くお前に追いつきてーんだよ、って。