絶対値のゆくえ
分かりやすく伝えてくれているんだろうけど、
言っている意味が分からなかった。
理解したくなかった。
「でも!」
「友達と離れるのはさみしいと思うけど、ちょうど高校入学になるんだし、新しい友達できるわよ」
「しかもな、引っ越し先は、自然がいっぱいで、ご飯も美味しいし、おしゃれなお店もいっぱいあるぞー!」
「そんなのどうでもいいっ!!」
めずらしく粉雪が舞っている夜道。
私はその中を夢中になって駆け抜けた。
季節は冬。
目からあふれる涙だけが熱い。
痛いくらいに。
――いず、話があるんだ。
お父さん、来年の2月に転勤することになった。
――でも、いずは今の中学で卒業式出たいでしょ?
だから、いずはママと一緒に、3月にパパのとこ引っ越すことにしようね。
さっきの両親の話が次々と頭の中でリピートされる。
必死で耳をふさいだが、意味はなかった。