絶対値のゆくえ
「よ、よっくん! こんな時間にどしたの?」
「俺? 塾の冬期講習に行ってて、その帰り」
「そうなんだ。頑張ってるね!」
「お前こそ……どしたの?」
心配そうな顔で、君は私の顔をのぞきこむ。
急いで顔をそらし、「あは、ちょっと親とケンカしちゃって」と口にした。
「どーしたんだよ。辛いことあったら俺に言えよ」
「ありがと……大丈夫、大したことじゃないし」
「…………」
違う、今の私にとって残酷すぎることだよ。
もしかしたら君にとっても、そうかもしれない。
2人で北高行くために、一緒に頑張っているんだから。
「…………」
涙は出さないようにふんばった。
いつの間にか涙じゃなくて、冷たい雪の粒が頬をかすめていた。
同じ目標に向けて、一緒に走っている君だからこそ、伝えなきゃ。
だけど、うぬぼれかもしれないけど。
この事実が、君を惑わせてしまったらどうしよう。