絶対値のゆくえ
「あ……」
どくんと胸が震えた。
そこには『合格祈願』と金色で刺繍された、お守りが入っていたから。
「俺も同じのもってるから。それはお前の」
嬉しくて、悲しくて、辛くて、胸がいっぱいになってしまう。
「え……。ありがと……っく。ううぅ」
「ばーか、何泣いてんだよ」
優しい声で、そう言って私のツインテールをひっぱる君。
「痛っ! ……だって嬉しくてっ」
そう伝えると、
「絶対、一緒に北高行こーな」
と言って、君はぽんぽんと私の頭を撫でてくれた。
私は君より成績はいいけれど、本当はただのバカかもしれない。
涙が止まらなくなってしまい、言えなかった。
君はどんな春を思い描いているのだろう。
その春の中に、私は存在できない。
だったら君だけでも、目標にしている高校に受かってほしい。
「もちろん。絶対、2人で北高行こうね……っ」
私は、君に嘘をついてしまった。