絶対値のゆくえ
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☆
年が明けて。
引っ越し先になる場所が決まった。
その街には、私の成績でちょうどよい私立の進学校があった。
お父さんは新しい街で、支店長になるらしい。
お母さんは私に気を遣いつつも、そのことを喜んでいた。
パパは仕事で頑張って成果を出したのよ、いずも引っ越しはつらいと思うけど引き続き受験頑張ろう、
とのこと。
最後の3学期が始まる。
先生に、引っ越しと志望校変更のことを報告しに行った。
同時に、このことは絶対に誰にも言わないでください、と必死になって頭を下げた。
「うがー。あと少しなんだよ」
「え……どしたの?」
「合格ライン、安定して超えるには、あと少し点を上げないとなんなくて。
得意の社会か、上がってきた数学のどっちか。他はあんま見込みねーし」
伸びをしながら、横目で私を見る君。
珍しく、その顔からは疲れがにじんでいた。
「大丈夫だよ! よっくん、去年の秋からすごい点数上がったし」
私は君の肩をたたき、笑顔でそう励ました。
君の体がぴくりと反応する。
まだ来年の春は確定していない、この状況。
もちろん、不安は大きいと思う。