絶対値のゆくえ
「……突然だけど、よっくんって遠恋とかできるタイプ?」
ふと私はそう口にしていた。
「は? 何突然」
君は怪訝そうな顔で私を見つめた。
「こ、この前友達に恋愛相談されてさー。男の子ってそういうのどうかなって思って」
「俺は……たぶん無理。好きだったら近くで一緒にいたい」
君は私を見据えたままそう言った後、恥ずかしそうに視線を外した。
一瞬、目の前が真っ暗になってしまった。
ずきん、と胸が痛くなった。
「あ、そうなんだー。やっぱそうだよねー。貴重なご意見ありがとう」
へらへらとそう返してみたが、
「お前は違うの?」とぼそっと言われてしまう。
私だって君と一緒にいたい。
離れることなんて考えたくない。
だけど無理なんだよ。
一緒に春は迎えられないんだよ。
「やっぱり離れたら無理なのかな……?」
いつの間にか勉強に集中しはじめていた君に、この言葉は届かなかった。