絶対値のゆくえ
でも、やっぱり噂はどこからか漏れてしまっているようで。
「いずたそ……私、聞いちゃったんだけど。先生たちが職員室で話してるの」
「ねぇ……引っ越しって、本当?」
他の子がいなくなった女子トイレで、
私は友達2人に詰め寄られていた。
「うん……」
この2人はずっと仲が良くて、信じられる存在。
私は静かにうなずく。
君と離れるのはもちろん、仲の良い人たちと離れ離れになるのも寂しい。
目の前で友達は悲しそうな顔をしていた。
そして、やっぱり。
「よっくんはどうするの?」とか細い声で聞いてきた。
私は目に涙をにじませながら、
「お願い……まだ誰にも言わないで。もちろん、よっくんには絶対!」
と目の前の2人に頭を下げた。
「でもいつかバレるんだから。よっくんのこと傷つけちゃうんだよ?」
「よっくん……北高受かって、いずたそに告白するって言ってたのに!」
いつの間にか友達も感情的になり、涙目になっていた。
「うぅ、私……よっくんの受験の邪魔したくないの……絶対に」
そう泣きながら伝えると、
友達は左右からよしよしと2人で頭を撫でてくれた。