絶対値のゆくえ
4月から、君と離れ離れになる。
日を追うごとに、その事実をリアルに考えられるようになってしまう。
そして、
引っ越しのことが君にバレたらどうしようと気を張りっぱなしで、
心の中はぐちゃぐちゃだった。
「お前、最近ぼーっとしてるっしょ。大丈夫?」
隣から君の心配そうな声が聞こえた。
「う、うん。もうすぐ本番だって思うと、緊張しちゃって」
えへへ、と笑うことしかできない私。
「ばーか、お前は大丈夫だよ」
「よっくんこそ!」
いつも通りお互いを励ましあっていたら、君は表情をふっとこわばらせた。
私の神経は一気に、君にひきつけられた。
「あのさ……」
「ん?」
「試験終わったら、俺、お前に言うことある」
君は私だけに聞こえるように、そうつぶやいた。
心なしか君がまとう空気は、
試験に向けたものじゃないような緊張感を帯びていた。
どきどき、ずきずきと痛みを伴う鼓動が体を包む。