絶対値のゆくえ
「あ、私もある……よっくんに伝えなきゃいけないことっ」
喉が詰まってうまく言葉を発することができなかった。
「おいー、そこラブラブしてんじゃねーよ」
しばらく2人で見つめあっていると、クラスの男子からの冷やかしに邪魔された。
君は顔を赤くしながら、うっせー! と反論する。
『試験終わったら、俺、お前に言うことある』
よっくんが私に何を言いたいのかは、友達からこの前、聞いてしまった。
噂レベルだし、信じられなかったけど。
試験は午前に3教科、昼休みを挟んで午後に2教科。
私は最後の教科が終わるまで、君にバレないようにしなきゃいけない。
試験会場の北高に、私がいないことを。
幸いなことに、私と君の苗字は離れているため、
試験の教室は別になるだろう。
「あのさ、試験の日だけど、私休み時間も集中したいし、終わるまで会わないようにしようね」
緊張しながらそう伝えると、
「なんだそれ。まあ、俺だって午後の社会にかけてるし、お前こそ休み時間とか絶対邪魔しにくんなよ」
と言って、君は私のツインテールを引っ張った。
「あいたたた。本番、頑張ろうね……」
顔を伏せながら、私は君にそう伝えた。