恋は盲目
まだ誰も来てない、か。
今日は同好会のメンバーで集まって、ご飯を食べに行く約束をしていた。
18時に部室に集合だったが、講義がなく私は早めに部室に足を運んだ。
そりゃ、一時間前だもん。
誰もいないのは当たり前だよね。
ーーキイ。
私の後ろで、古い金属音のするドアが開く音がした。
「あれ、朋もう来てたの」
背の高い、グレーのパーカーを着た司(つかさ)だった。
「あれ?司も講義ないの?」
「ああ。今日4限休講」
司は私と同じ学年の、クールな男子。
大勢の輪の中ではあまり話さず、冷静沈着だ。
「私もはやく来すぎちゃった。まだ約束の時間まで一時間もあるね。みんな時間にルーズだから、18時に全員集まらないだろうけど」
私は司に笑いかけ、
ドアの前に立ち尽くしたままの司に座りなよと促す。
「今日なに食べに行くのかな。わたし昼御飯全然食べてないからお腹すいちゃった…」
「あのさ」
私が話終わる前に、司の言葉で遮られる。
「うん?」
初めて会った頃は、司の表情の変化が読み取れなかった。
司はあまり表情が変わらない。
でも今は眉間にシワがより、深刻な表情をしているのが一目でわかった。