恋は盲目
「龍也さんは、朋以外にも浮気相手が何人かいるよ」

聞きたくない言葉だった。
私は耳を手で塞いで、すべてをシャットアウトする。

「本当は朋も気づいてるんだろう」

司の言葉が、槍のように胸に突き刺さる。
耳を塞いだって、意味がない。

これが現実なんだ。
私はずっと、現実から目を逸らしたままだった。

龍ちゃんが、私以外にも浮気相手がいることくらいわかっていた。
だんだんと減る連絡の回数がそれを物語っている。

「それを口にしてしまえば、私と龍ちゃんの関係は終わっちゃうんだよ」

私は押し寄せる感情をこらえながら、青々とした空を切り取る窓から目を逸らしうつ向いた。

「もうやめなよ。苦しいだろ、こんな関係を続けるのは」

終わらせなければいけない。
そんなことわかっている。

でも4年間想い続けた人が、やっと私の想いを受け入れてくれたんだよ?

ずっと繋ぎたかった手を繋いで、触れたかった肌に触れて、感じたかった体温を感じれるんだよ?

そばにいたいと思うじゃない。
手放したくないって、思うじゃない。
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