アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
 桜田は窓に手をかけ、遥人に話しかける。

「おい、早く戻った方がいいぞ。
 あれは相手が自分を見てないとわかると怒り出す女だからな。

 梨花と揉めるな。
 こっちの負担が大きくなる」

 なに勝手なこと言ってんだ、この人。
 相変わらずだな、と思ってその横顔を見ていた。

 みんな、この顔にクラっと来るのか。

 この勝手さにか、と思っていたとき、桜田は言った。

「それから、那智には手を出すな」

 こらっ、なにを勝手にっ、と思う。

 いや、手を出して欲しいわけではないのだが。
 ……本当に。

 なんでお前が口を出す、と遥人は言ったようだった。

 そりゃそうだ。

 そのとき、桜田は、ふふん、と笑って言った。

「俺が那智の『パパ』だからだ」

「違うっ。
 もう〜っ、返してっ」
と那智は、桜田から携帯を奪い取る。

 彼に向かい、誰がパパですかっ、叫んだあとで、遥人に言った。

「専務、あとで、……あとで、説明しますからっ。
 あっ、勝手に私のつぼ焼き食べないでっ」


< 104 / 276 >

この作品をシェア

pagetop