アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
渋々鍵を渡すと、
「お前、これ、鍵が何個もついてるが、何処の鍵だ」
と言われる。
「え、えーと……家の鍵とか。
あと……」
車の鍵とか、オフィスの鍵とか、と言いたかったのだが、そもそも形が違うな、と観念した。
ひとつずつ、説明しながら、指差す。
「うちの鍵、専務の家の鍵、……お母さんの家の鍵と」
一瞬、遥人の顔を窺い、
「……桜田さんちの鍵?」
と言うと、
「何故、疑問系だ」
と睨まれた。
いやあ、と那智は苦笑いする。
「すみません。
でも、一応、持ってはいるんですけど、ほとんど行ったことはないです。
そして、そこで梨花さんを見たこともないですよ」
と言うと、遥人は妙な顔をした。
「なんの心配をしてるんだ、お前は」
と呆れたように言った遥人に鍵を投げ返される。
どうもそういうことを言いたいわけではなかったようなのだが、何故か、遥人はそのまま追求することをやめてしまった。
代わりに、なんだかわからないが、可笑しそうに笑う。
わあ、と思ってしまった。
わあ、可愛い……。
可愛いなんて思うはずのない顔立ちなのに、何故、そんなことを思うのか自分でもよくわからなかったが。
「お前、これ、鍵が何個もついてるが、何処の鍵だ」
と言われる。
「え、えーと……家の鍵とか。
あと……」
車の鍵とか、オフィスの鍵とか、と言いたかったのだが、そもそも形が違うな、と観念した。
ひとつずつ、説明しながら、指差す。
「うちの鍵、専務の家の鍵、……お母さんの家の鍵と」
一瞬、遥人の顔を窺い、
「……桜田さんちの鍵?」
と言うと、
「何故、疑問系だ」
と睨まれた。
いやあ、と那智は苦笑いする。
「すみません。
でも、一応、持ってはいるんですけど、ほとんど行ったことはないです。
そして、そこで梨花さんを見たこともないですよ」
と言うと、遥人は妙な顔をした。
「なんの心配をしてるんだ、お前は」
と呆れたように言った遥人に鍵を投げ返される。
どうもそういうことを言いたいわけではなかったようなのだが、何故か、遥人はそのまま追求することをやめてしまった。
代わりに、なんだかわからないが、可笑しそうに笑う。
わあ、と思ってしまった。
わあ、可愛い……。
可愛いなんて思うはずのない顔立ちなのに、何故、そんなことを思うのか自分でもよくわからなかったが。