アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
 ちょっとの間、黙っていたが、那智は結局、口を開いた。

「変なんですよね。
 専務も一人では眠れない人なんでしょうが」
と言うと、片目を開け、

「子供みたいに言うな」
と言ってくる。

「そういう意味じゃないですよ。
 子供って、一度寝たら、朝まで起きないじゃないですか。

 実は、寝ついたら、一人で寝てても大丈夫なんですよね。

 でも、大人は途中で何度か目を覚ましたりするから。

 そのとき、一人だと寂しいというか、落ち着かない気持ちになりますよね。

 私も最近そうなんです」

 那智は遥人から視線をそらし、部屋の中を見た。

「目が覚めたとき、一人だと落ち着かないというか。

 寝るときに一人だと落ち着かないというか」

 本当は、遥人の寝顔を見ないと安心して眠れないのだったが、そう口に出すのは、さすがに恥ずかしかった。

 いつからだろう。

 遥人がちゃんと眠ったことを確認しないと眠れなくなったのは。

 ずっと、妙な胸騒ぎがしている。
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