アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
那智は遥人の手に触れた。
本当は彼に訊きたいことがある。
なんで、貴方は眠れないんですか?
なんで、貴方は……。
「那智」
「はい」
「お前が俺が寝ても帰らないのは、俺が途中で目を覚ましてもいいようにか」
「それもあります」
遥人は視線を那智から外して言った。
「俺が夜、うなされているからか」
痕がつくほど強く遥人が自分の手を掴んでくるときがある。
最初の夜もそうだった。
あれからなんだか遥人を置いては帰れなくなった。
「私、思うんですけど。
シェヘラザードって、恐らく実在の人物ではないですが。
本当に居たのなら、途中からは、物語は語ってなかったんじゃないかと思うんです。
物語じゃなくて。
語っていたのは、ただ、自分たちのことなんじゃないかと」
「俺はなにも話さないぞ」
「わかってます」
それは那智を信用しているとかいないとか、きっと、そんなことじゃなくて。
那智は遥人に笑いかけて言った。
「いいんですよ、専務はなにも話さなくても。
だって、王様なんですから」
那智、と呼びかけた遥人の手が那智の頬に触れる。
本当は彼に訊きたいことがある。
なんで、貴方は眠れないんですか?
なんで、貴方は……。
「那智」
「はい」
「お前が俺が寝ても帰らないのは、俺が途中で目を覚ましてもいいようにか」
「それもあります」
遥人は視線を那智から外して言った。
「俺が夜、うなされているからか」
痕がつくほど強く遥人が自分の手を掴んでくるときがある。
最初の夜もそうだった。
あれからなんだか遥人を置いては帰れなくなった。
「私、思うんですけど。
シェヘラザードって、恐らく実在の人物ではないですが。
本当に居たのなら、途中からは、物語は語ってなかったんじゃないかと思うんです。
物語じゃなくて。
語っていたのは、ただ、自分たちのことなんじゃないかと」
「俺はなにも話さないぞ」
「わかってます」
それは那智を信用しているとかいないとか、きっと、そんなことじゃなくて。
那智は遥人に笑いかけて言った。
「いいんですよ、専務はなにも話さなくても。
だって、王様なんですから」
那智、と呼びかけた遥人の手が那智の頬に触れる。