アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
浮気相手のちょっとした秘密



 戸締りをし、一度外に出たあとで、桜田は、オートロックのはずの鍵をもう一度確認していた。

「ご苦労だね、桜田さん」

 そんな台詞が聞こえて、振り向く。

 高校生というには、ちょっと幼い風貌の綺麗な顔をした少年が立っていた。

「洋人っ」

「那智たちは仕事に行った?」
と腰に手をやり、鷹揚に訊いてくる洋人に言う。

「……お前の顔だけは見たくなかったな」
と。

「僕もあんたには会いたくなかったんだけど、仕方ないじゃない。
 ねえ、辰巳遥人って何者なの?」

 桜田は黙っている。

「まあいいや。
 可愛い那智に何事もなければ」
とおろしていたヘッドフォンをかけようとする洋人に言った。

「お前、那智には手を出すなよ」

「あんたにはもう、それを言う権利はないよ」
と睨まれたが、すぐに、洋人は、

「大丈夫」
と言う。

「那智はちょっと似たとこあるから、好みだけど。
 まあ、今はそんな必要全然ないねー」
と笑ってみせる。

 殺す、こいつっ、と思いながら、桜田は言った。
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