アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
「ああいう完璧な人ほど、なにか心に傷があったりするよな」

「傷っていうか……。
 まあ、傷なのかな」
と那智はフロントグラスから、朝の空を見、目をしばたく。

 ふいに亮太が言い出した。

「お前、やっぱり、俺と付き合うか?」
「は?」

「いや、専務となんかややこしいことになってそうだから。
 しかも、発展性がない」

 そう言い切られてしまう。

 ぐっ、と那智はつまった。

 確かに、発展性も明るい未来の欠片もなさそうだ。

 だが、ズバリ指摘されて悔しく、
「あんた実は単に私と付き合いたいんじゃないの?」
と言ってしまう。

 すると、亮太は、
「そうかもな」
と言い、赤だったので、いきなりハンドルから手を離し、肩に触れると、キスしようとしてきた。

「だっ、駄目だってばっ」

 専務ともしてないのにっ。

 それに、第一、

「私、ファーストキスもまだなのにっ」
と叫ぶと、

「はあ?」
と呆れたように言われる。

「桜田さんだって、頬にしかしないのにっ」

「誰だ桜田さんって、専務は何処に行ったっ」
とわめかれた。


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