アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
『専務、今日はどっちにしますか?

 うちですか?
 専務のおうちですか?』

 いつもの調子で那智が訊いてきた。

 だから、自分もいつも通りに答えた。

 那智がなにも知らないはずはない。

 さっき、社長が早まった式の打ち合わせに来て、それを素知らぬ顔で聞いていた公子が、今、居なくなっているからだ。

 それでも、那智が普段通りに振舞ってくれるのなら、今はそれに甘えようと思う。

 最後くらいは、そんな我儘も許されるのではないのだろうか。

 勝手な考えだとは思うが。

 この一週間、式の準備以外では、梨花には会わないようにしようと思っていた。

 忙しいからと言ったが、向こうも何故かそれを承諾してくれた。


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