アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
遥人の部屋で、那智はいつものように膝枕をしてくれた。
「なんの話、しましょうかねー。
もういい加減、しょうもない話も尽きてきましたよ」
と言うので、
「嘘をつけ」
と言った。
「お前の人生はしょうもないことのオンパレードだろうが」
「言いますね〜。
っていうか、今、こうしていることが、一番不毛でしょうもない気がするんですけどね」
確かに不毛な感じはするな、と思いながら、遥人は起き上がり、
「もういい。
お前も寝ろ」
と言うと、
「あれ? 怒ったんですか?」
と聞いてくるので、いや、と答えた。
「今日はなにも喋らなくていいから、側で寝てろ」
那智の方が神経が太いなと思う。
こいつは、本当にいつも通りだ。
「わかりましたよー」
と言いながら、この豪胆なシェヘラザードはそのまま横になる。
枕許の暖かいオレンジの光に照らされた那智の顔を見ると、彼女は、へらりと笑う。
「……機嫌がいいな」
身体を那智の方に向けて言うと、
「だって、生カピバラですよ」
と言ってくる。