アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
「なんでですか。
実は仕事の面で、私に期待してくれてるとか」
と機嫌よく言ってくる那智に、そんな莫迦な、と答える。
「うっかり頭とか撫でてしまわないようにだ」
仔犬が駆け寄るように書類を持ってくる那智に、よくやった、でかした、と頭を撫でてしまわないように。
「那智」
と呼びかけ、目を閉じる。
「はい?」
……愛してるよ。
たぶん。
俺の人生で、お前が一番俺の心の近くに居ると思うから。
なにも言わなかったのに、那智は何故だか、嬉しそうに笑った。
ゆっくりと眠りに落ちていく。
一番気持ちのいい時間だ。
仕事の疲れもなにもかも溶け出して何処かに行ってしまうような。
那智が現れる前はこうではなかった。
眠ることはただ恐怖だった。
恐ろしい夢ばかり見る。
遺体の安置所で、白い布をかけられていた母親がむくりと起き上がってくる夢とか。
実は仕事の面で、私に期待してくれてるとか」
と機嫌よく言ってくる那智に、そんな莫迦な、と答える。
「うっかり頭とか撫でてしまわないようにだ」
仔犬が駆け寄るように書類を持ってくる那智に、よくやった、でかした、と頭を撫でてしまわないように。
「那智」
と呼びかけ、目を閉じる。
「はい?」
……愛してるよ。
たぶん。
俺の人生で、お前が一番俺の心の近くに居ると思うから。
なにも言わなかったのに、那智は何故だか、嬉しそうに笑った。
ゆっくりと眠りに落ちていく。
一番気持ちのいい時間だ。
仕事の疲れもなにもかも溶け出して何処かに行ってしまうような。
那智が現れる前はこうではなかった。
眠ることはただ恐怖だった。
恐ろしい夢ばかり見る。
遺体の安置所で、白い布をかけられていた母親がむくりと起き上がってくる夢とか。