俺だけ見てれば、いーんだよ。
目を開けると、真っ白な天井。
ここ、保健室かな?
記憶が少しづつ戻ってくる。
私、授業中に倒れて、十夜にここに運んできてもらったんだ……。
「十夜……」
もう教室に戻ったよね。
「なんだよ」
その声に驚いてベッドの横を見ると、十夜が椅子に座ってこっちを見ていた。
「十夜、ずっといてくれたの?」
「授業をさぼれる格好の理由だしな」
「悪いんだから、もう!」
ははっと、十夜が笑う。
「そんなこといっていいのかな。お前が倒れたとき、とっさに床に頭ぶつけて流血しないように俺様がかばってやったから、救急車こなくてすんだんだぜ」
「えっ」
だから、倒れたときどこも痛くなかったんだ……。
「……ありがと、ね」
「敬え、ひれ伏せ、跪け」
「あ、やっぱ、今のお礼ナシね。調子に乗るから」
「おい!」
ふたりで顔を見合わせて笑う。
「ねえ、私、重くなかった?」
「重い重い。もう重すぎて廊下に捨ててこうかと思った」
「ひどっ!言い過ぎでしょ、それはー」
「まあな。俺の感想としては、『重い』よりも『柔らかい』だったな」
「ぎゃー!十夜の変態!痴漢!セクハラだー!」
「何とでも言え。だから女の子は大好きなんだ。柔らかくって、いい匂い♪」
「サイッテー!!」
思わず体を起こして、十夜の胸を叩く。
その感触は思っていたよりも筋肉質で。
見た目はほっそりとして見えるけれど、ちゃんと筋肉がつくところにはついてるんだな。
なんて、感心しちゃったりして。
「おい、お前がセクハラじゃねーか。今、いい筋肉してる、とか思ったろ」
「えっ、なんで……」
「わかりやすいんだよ、お前は」
十夜の胸を叩いた私の右手を、十夜がそっと包む。
「お前の心の中も見せてくれよ」
心の中?
「那菜」