俺だけ見てれば、いーんだよ。
私は十夜の手を反対の手で、そっと外す。
「泉に、何か言われたでしょ?」
行き場を失った十夜の手が、その膝の上で組まれる。
拒絶してしまったように思われたかもしれない。
目が、見れないよ。
「十夜?」
「さあ?」
「……十夜は、イジワルだね」
そうやってはぐらかして、そのくせ、優しく見つめたり、手に触れたりするんだ。
いつも、私をブス呼ばわりして、イジワルなことばっか言う。
「私には、私にだけは、いっつもイジワルだ」
私だって、女の子として見てもらいたいのに。
「わかんねーのかよ」
「なにが」
「わかれよ」
「だから、なにを」
「いい加減、気づけよ。気づかないんだったら、泉とのこと、教えてやらない」
十夜のイジワル。
十夜のバカ。
セクハラ十夜。
……でも、好き。
どんな十夜でも、好き、大好き。
「わかんないよ。私、バカだから」
「バカっていうより、鈍感だな。でも、俺は絶対に譲らない」
「は?何言ってんの?」
「俺が今、一番欲しいもの、なんだと思う?」
十夜の大きな手のひらがわたしの頬に、そっと触れる。
欲しいもの?
クリスマスプレゼントとか?
「わかんないよ。プレゼントだったら、ファンクラブの人たちからもらえば?」
「はぁー。ホントお前ってどうしようもねーな」
「……っ、悪かったわねっ!私の気持ちなんて、十夜にはゼッタイにわかんないよ」
「気持ちってなんだよ」
「私がどれだけ十夜を好きか、十夜にはゼッタイにわかんない!!」
……あ。
言っちゃった……。
なりゆきで言っちゃった、つい……。